こんにちは!
今日は、BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」を徹底的に考察し、歌詞の意味を解説します!
「君」という大切な存在を見失ってしまった「僕」が、「今を生きる意味」を探す楽曲。
とらわれてしまった過去を、「僕」はどう乗り越えていくのか。
私達の弱い心に寄り添ってくれる歌詞は必見。
そんな本楽曲の魅力に、歌詞分析の観点から迫っていきます!
✔過去にとらわれた「僕」の姿
✔「僕」が探した今を生きる意味とは
✔「君」とはいったい何者なのか
映画『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の主題歌
本楽曲は、映画『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の主題歌として起用されています。
映画『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』は、言わずと知れた『名探偵コナン』シリーズ映画の劇場版第25作目の作品です。
このような節目となる作品の主題歌として起用された本楽曲は、映画と合わせて今注目を集めています。
本楽曲と映画のつながりを探してみるのも、楽曲を味わう一つの方法であるかもしれません。
タイトル「クロノスタシス」とは?

本楽曲のタイトルである「クロノスタシス」とは目の錯覚の一種で、【速い眼球運動の直後に見た最初の映像が、実際より長く見える現象】のことを指します。
よく知られているのは、「時計の針が止まって見える」という現象です。
時計をパッと見た時に、一瞬止まって見えるあれです。
本楽曲では、「クロノスタシス」という現象に例えて、時計の針が止まったように残り続ける過去の記憶について歌われています。
この点に注目しながら、歌詞の分析を進めていきましょう!
歌詞の意味
1番
もう一度ドアを開けるまで
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
ノルマで生き延びただけのような今日を
読まない手紙みたいに重ねて
また部屋を出る

ここでは、毎日を惰性的に生きる「僕」の様子が描かれています。
家に帰ってきた「僕」、しかしこの外出には深い意味などありませんでした。
学校や会社帰りだと予想されます。
ただノルマをこなす為だけに外に出て、生きた今日という日。
帰ってきたとしても特段することなどもなく、“もう一度ドアを開けるまで”=登校や出勤するまで、「僕」は惰性的に過ごします。
“読まない手紙みたいに重ねて
また部屋を出る”
人生には、1日1日に意味があるはずです。
しかし、「僕」はその意味を見つけることができません。
ちゃんと読めば意味があるはずの手紙でも、読まずにいたらただの薄い紙屑です。
そんな薄い紙をいくら積み重ねたところで、何の価値もありません。
この部分は、日々の中で何も積み重ねられない「僕」の様子を、読みもせず、高く積み上げられることもない手紙に例えた歌詞になっています。
そして「僕」はまた、意味もなく部屋を出ていくのです。
明け方多分夢を見ていた
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
思い出そうとはしなかった
懐かしさが足跡みたいに
証拠として残っていたから
大通り 誰かの落とした約束が
跨がれていく
ここでは、「僕」の過去についてほのめかされています。
明け方に夢を見ていた「僕」、しかしどんな夢だったのかを思い出そうとはしません。
“懐かしさが足跡みたいに
証拠として残っていたから”
具体的なことは思い出せなくても、確かにそこにある懐かしいという感情。
それさえあれば、何の夢を見ていたかは明白なのです。
そして、ここで見ていた夢は、のちに登場する「君」の夢だったと予想されます。
“大通り 誰かの落とした約束が
跨がれていく”
都会の交差点では、過去に交わしたはずの約束が忘れられていきます。
人込みの中に落とした約束は、もう見つけることができません。
こんなことを思うということは、「僕」にも何か「君」とかわしたまま、のちの歌詞にもあるように「忘れようとしている」約束があるのだと考えられます。
この街は居場所を隠している
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
仲間外れ達の行列
並んだままで待つ答えで
僕は僕をどう救える
ここでは、街という存在が人々に与える影響について描かれています。
“この街は居場所を隠している
仲間外れ達の行列”
街の人込みは、「僕」の居場所を奪っていきます。
同じように歩き、同じように生きる人たちが溢れかえっている街。
繰り返しの日々は、「僕」から生きる理由を奪っていきます
そして、そんな一人ぼっち、仲間外れである「僕」と同じような境遇の人は、この街に大勢いるのです。
“並んだままで待つ答えで
僕は僕をどう救える”
そんな仲間外れたちが作る行列、その中に「僕」も並んでいます。
何に並んでいるのかもわからないまま、ただ待っている。
生きる意味を見いだせていないのに、日々をとりあえず生きている「僕」をよく表した歌詞です。
そしておそらく、ただ待っているだけでは、救いの道は見えてこないのです。
飾られた古い絵画のように
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
秒針の止まった記憶の中
何回も聞いた君の声が
しまっていた言葉をまだ 探している
ここでは、「僕」がこうして立ち止まってしまっている理由が描かれています。
“飾られた古い絵画のように
秒針の止まった記憶の中”
古い絵画に描かれるように、ずっとそこに変わらずある記憶。
記憶の中にある「君」との思い出は、今も時が止まったようにそこにあり続けます。
“何回も聞いた君の声が
しまっていた言葉をまだ 探している”
しまっていた言葉は、先ほどあった約束や、「君」に伝えられなかった想いのことでしょう。
もしくは、心の奥底に眠る記憶そのもののことかもしれません。
この部分では、心にしまったはずの気持ちを、「君」という存在が呼び起こそうとしている様子が描かれています。
このように、昔の記憶にとらわれてしまっているから、「僕」は日々に意味を見いだせず、立ち止まってしまっているのだと考えられます。
2番
ビルボードの上雲の隙間に
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
小さな点滅を見送った
ここにいると教えるみたいに
遠くなって消えていった

ここでは、立ち止まっている「僕」と飛行機が対比された表現になっています。
“ビルボード”とは、街中で見るような広告看板のことです。
通勤、通学中に見上げる飛行機の点滅。
それは確かな存在感を示しながら「僕」の上を通り過ぎていきました。
目的もなく立ち止まっている「僕」と、目的地に向かって高く飛び続けていく飛行機が対比的に描かれています。
不意を突かれて思い出す
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
些細な偶然だけ鍵にして
どこか似たくしゃみ 聞いただとか
匂いがした その程度で
臆病で狡いから
忘れたふりをしなきゃ
逃げ出しそうで
ここでは、「君」のことを忘れられない「僕」の様子が描かれています。
“どこか似たくしゃみ 聞いただとか
匂いがした その程度で”
日々の中でふとした時に思い出す、「君」のシグナル。
些細なきっかけで思い出してしまうというのは、「僕」の中で「君」がどれほど大きな存在なのかを表しています。
“臆病で狡いから
忘れたふりをしなきゃ
逃げ出しそうで“
サビにもあったように、「僕」は「君」のことを忘れることができません。
むしろ、考えないようにすることで、「生きる」ということから逃げ出さないようにしているのでしょう。
これらの歌詞では、「君」のことを忘れて前に進みたいけれど、なかなか忘れられない「僕」の様子が描かれています。
例えば未来 変えられるような
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
大それた力じゃなくていい
君のいない世界の中で
息をする理由に応えたい
僕の奥残ったひと欠片
時計にも消せなかったもの
枯れた喉を振り絞って
いつか君に伝えたいことがあるだろう
ここでは、「君」のいない世界を生きる意味を探す「僕」の様子が描かれています。
“例えば未来 変えられるような
大それた力じゃなくていい”
「僕」が望んでいるのは、自分の人生を大きく変えるような力ではありません。
ただ、「君」がいないこの世界でなぜ生きているのかという理由が欲しいのです。
過去に失ってしまった「君」という生きる意味、それに代わるものを「僕」は求めます。
“僕の奥残ったひと欠片
時計にも消せなかったもの“
どれほど時間が経とうと、消えることのなかった「君」の記憶。
いつかもう一度会えたなら、「僕」は伝えられていなかった想いを伝えたいと願います。
2番以降
それっぽい台詞で誤魔化した
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
必要に応じて笑ったりした
拾わなかった瞬間ばかり
どうしてこんなに
今更いちいち眩しい

ここでは、「君」との些細な思い出すらも忘れられない「僕」の様子が描かれています。
“それっぽい台詞で誤魔化した
必要に応じて笑ったりした”
「僕」は「君」に、本当の気持ちを伝えられていなかったのでしょうか。
その場で話を合わせたり、笑って見せたり。
「君」を失った今になって初めて、その時は何も感じていなかった些細な出来事たちが輝いて見えます。
この歌詞では、失って初めて気が付いた、「僕」にとっての「君」という存在の大きさが描かれています。
この街は居場所を隠している
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
仲間外れ達の行列
並んだままで待つ答えで
僕は僕をどう救える
僕の奥残ったひと欠片
時計にも消せなかったもの
枯れた喉を振り絞って
いつか君に伝えたいことが
同じ歌詞の組み合わせになっているので省略します!
失くしたくないものがあったよ
BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」-作成:藤原基央
帰りたい場所だってあったよ
君のいない世界の中で
君といた昨日に応えたい
飾られた古い絵画のように
秒針の止まった記憶の中
鮮明に繰り返す君の声が
運んできた答えをまだ
しまっていた言葉を今探している
ここでは、前に進もうとする「僕」の様子が描かれています。
この世界で生きる意味を探していく中で、「僕」は失いたくないもの、帰りたい場所を見つけることができました。
続く“君のいない世界の中で 君といた昨日に応えたい”という歌詞には、「君」の記憶にとらわれた昨日の自分と決別して、前に歩き出そうとする「僕」の様子が見て取れます。
“鮮明に繰り返す君の声が
運んできた答えをまだ
しまっていた言葉を今探している”
しかし、「僕」は「君」の記憶を忘れてしまったわけではありません。
今でも鮮明に覚えている「君」の声が導き出す、「君」という存在の大切さ。
「僕」は前に進みながらも、「君」の記憶を大切に、これからも生きていくのです。
考察
「今」を生きる理由を探す楽曲

本楽曲は、「僕」が今を生きる理由を探す楽曲であると言えます。
特に目的意識もなく、毎日を惰性的に繰り返す「僕」。
そうなってしまった原因は、過去に「君」を失ってしまったからであると推測できます。
“拾わなかった瞬間ばかり
どうしてこんなに
今更いちいち眩しい”
この歌詞にもあるように、「君」がいる間にはあまり意識していなかった感情。
「僕」にとって、「君」こそが生きる意味だったのです。
1~2番までの「僕」は、時計の針が「君」といた時間で止まって見えるほど、過去にとらわれてしまっています。
“失くしたくないものがあったよ
帰りたい場所だってあったよ”
最後のサビでは、「君」以外の生きる理由を見付けることができた「僕」の姿が描かれています。
ここで重要なのは、「君」という存在自体を忘れたのではなく、「君」のいた過去にとらわれることをやめたという点です。
「君」との思い出は、今も「僕」の中で生き続けているのです。
まさに「クロノスタシス」のように、一瞬止まっていた時間が、再び未来に向けて動き出す様子。
本楽曲ではこのような、「僕」が一歩前に踏み出す瞬間が描かれていたのではないでしょうか。
「君」の正体は?
本楽曲では「君」とは何者なのか、「僕」と「君」の関係性はどうなっているのかが明示されていません。
唯一明らかなのは、
➀「君」は大切な存在であった
②現在は「君」を失ってしまった
という2点です。
まず➀について、「君」については様々な捉え方ができます。
昔の恋人、片思いの相手など恋愛要素でも捉えられるし、友達、兄弟など別の要素でも捉えられます。
もっと言えば、過去の夢や目標など、擬人化された概念であるとも取れます。
②に関しても、「君」が実際の人物なら、「君」と死別したとか、引っ越して離れ離れになってしまったとか、色々原因を考えることができます。
「君」が夢や目標なら、何らかの理由で諦めてしまった、ということになりますね。
この「君」という存在の不明瞭さこそ、本楽曲の工夫であると筆者は捉えました。
人は誰しも大なり小なり、過去に後悔や未練の気持ちを持ちます。
そして、時には「僕」と同じように、過去にとらわれて生きる意味を見失いそうになることもあるでしょう。
本楽曲で示された「君」とは、私たち自身がとらわれている過去を具現化した存在なのです。
そして、そんな過去を乗り越える「僕」の様子が本楽曲では描かれていました。
本楽曲は我々自身がとらわれてしまっている過去に寄り添い、過去を乗り越えて今を生きる勇気を与えてくれる楽曲なのです。
筆者の感想
バンプらしい、繊細な気持ちが表現された楽曲でした。
幻想的な歌詞の中に隠された暗い気持ちと、それを乗り越えていく力。
バンプの楽曲って、いつも私たちの「弱い心」に寄り添ってくれるので、めちゃくちゃ前向きな歌詞ではなくても、自然と勇気や元気をもらえます。
生きる意味を見失ってしまいそうになった時に聴きたい楽曲であると感じました。
※追記
以前よりたびたび紹介させていただいているサイト様、「er-music」様で、同楽曲のコード分析記事が公開されています。
同サイト様では、当記事では触れられなかった、メロディーなどから感じる本楽曲の特徴について語られています。
やはり、自分の視点とは違ったところからの分析は、勉強になりますね~!
音楽理論の観点からも本楽曲を楽しみたいという方は、是非!

この記事の感想やご意見など、是非コメント欄までお待ちしております!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
それでは(@^^)/~~~
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