【書籍レビュー】『私だけの所有者』あらすじ&考察!YOASOBI「ミスター」原作のここがすごい!

【書籍レビュー】『私だけの所有者』あらすじ&考察!書籍レビュー&考察

こんにちは!

今日は、「はじめての○○」をテーマに4人の直木賞作家が描く短編集、『はじめての』より『私だけの所有者(島本理生)』を徹底レビュー&考察していきます!

アンドロイドが初めて抱いた感情が描かれた本作品。

感情を持ったアンドロイドに起こった心境の変化と、仕掛けられた伏線に注目!

それでは、いってみましょう!

注意!

この記事では、『私だけの所有者』のネタバレを含みます。

次の基準を目安に、この記事の内容をどこまで読むかご確認ください。

ネタバレ小

作品の軽い概要のみ触れ、複線などの重要なネタバレは避けます。

ネタバレ中

作品の中で面白かったポイントなどを、すこーしだけ具体的にご紹介します。

ネタバレ大

物語の考察など、がっつりネタバレを含みます。
読む時間はないけれどどんな作品か知りたい、すでに読んだので考察を見たい、という方向けです。

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『はじめての』概要:ネタバレ無

YOASOBI×直木賞作家のコラボレーション

本作品が収録されている短編小説集『はじめての』は、人気アーティストである『YOASOBI』と、4人の直木賞作家(島本理生、辻村深月、宮部みゆき、森絵都)がコラボレーションして生まれました。

「現代エンターテイメントの最前線&最高峰!」と銘打たれたこの短編集。

4人の直木賞作家がそれぞれ、「はじめて○○をした時に読む物語」をテーマに作品を描きます。

さらに、これらの作品を原作とした楽曲をYOASOBIが順次配信していくという、一作品で二度おいしいプロジェクトとなっています。

収録されている作品は、次の4つです!

『私だけの所有者』-はじめて人を好きになったときに読む物語(島本理生)

『ユーレイ』-はじめて家出したときに読む物語(辻村深月)

『色違いのトランプ』-はじめて容疑者になったときに読む物語(宮部みゆき)

『ヒカリノタネ』-はじめて告白したときに読む物語

それでは、次の章からは「私だけの所有者」の内容についてみていきます!

あらすじ:ネタバレ小

アンドロイドである「僕」は、とある理由により某国で保護観察処分を受けていた。

その最中僕は、人工人間理論の研究者である「先生」と手紙でやり取りをすることになる。

主人公である「僕」はかつて、「Mr.ナルセ」という人物が所有するアンドロイドだった。

「Mr.ナルセ」は不愛想な人物で、「僕」は彼の機嫌を損なわないように、彼の役に立つために、日々思い悩んでいた。

緊張感に満ちた毎日だったが、「僕」はだんだんそんな毎日を愛おしく思うようになっていき…

「僕」に芽生えた、本来アンドロイドが持つはずのない感情と、「僕」と「Mr.ナルセ」の結末とは?

レビュー:ネタバレ中

主人公である「僕」が「Mr.ナルセ」の役に立とう、人間の感情を理解しようと苦悩する描写がとても感動的な作品でした。

人はなぜ、アンドロイドを求めるのか?

アンドロイドには明確な使命がある。はたして、人間の使命とは何なのだろうか?

人間とアンドロイドの区別とは?

哲学的ともいえる葛藤の中、僕が抱いた感情から目が離せませんでした。

主人公がアンドロイドだからこそ描けた、人を好きになるということの本質を感じることができました。

特に、僕とMr.ナルセの結末は、涙なしで見ることはできません。

物語にちりばめられた伏線と回収が鮮やかで、思わずうなってしまうような仕掛けも隠されています。

50ページほどの短編小説ですが、非常に満足感のある作品でした。

ここまでが、本作品をまだ読んでいない方向けの内容になります!

この先は、是非この作品を読んでから見ることをおすすめします!

以下に、リンクを張っておきますね!

考察:ネタバレ大

僕の「役に立ちたい気持ち」の変化

教会で祈る人

アンドロイドに与えられた、「所有者の役に立つ」という使命。

一貫してこの使命を大切にしていた「僕」ですが、物語が進行するにつれて変化が見られたように感じました。

はじめは、アンドロイドとしての役割を重んじ、Mr.ナルセの役に立とうとしていた僕。

これはある種義務感というか、あくまで所有者とアンドロイドという関係のもと成り立っていました。

一方、物語後半に描かれたのは、「好きな人の役に立ちたい」という感情だったと考えられます。

不器用ながらも自分のことを大切に思い、最期には自分が助かる道を示してくれたMr.ナルセ。

人間らしい「好き」という感情が、次第に「僕」の中に芽生えていきました。

地下鉄に閉じ込められた時、「僕」はアンドロイドとして所有者を助けるという気持ちだけではなく、「ひとりになりたくない、一緒に居たい」という気持ちを抱いていました。

一人になりたくないというのは、使役される存在であるアンドロイドには本来不似合いな、利己的で人間的な感情であると言えます。

与えられた使命としてではなく、「好きな人」に対して自分が役に立ちたいからという行動原理の変化が、「僕」の中にあったのではないでしょうか。

「人間らしさ」を得た僕

「先生」の正体が判明したとき、怒りの感情をあらわにする「僕」のシーンは、「僕」が人間らしい感情を得たことを証明する象徴的なシーンです。

アンドロイド的な思考であれば、怒りの感情は本来抱くはずがないのです。すでに死んでしまった所有者の役に立つ行動ではないのですから。

そのように考えると、「僕」の怒りは利己的な感情であると言えます。

「Mr.ナルセ」のためにした行動ではなく、大好きだった彼に対するひどい仕打ちを糾弾したいという「僕」自身の感情です。

本来利己を省みないはずのアンドロイドがこのような感情を抱くからこそ、「はじめて人を好きになる」という本作品のテーマが輝いて見えると感じました。

まとめ

『私だけの所有者』のレビュー&考察でした!

非常に読み応えのある作品ながらも、短い時間でサクッと読めます。

満足度めちゃ高いです。

本作品を読むと、YOASOBI「ミスター」の歌詞もより深く理解することができます。

小説好きにも、YOASOBIファンにも、おすすめの作品です!

本作品が気になった!という方は、以下にリンクを張っておくので、是非一度読んでください!

また、この記事で紹介している『私だけの所有者』を原作としたYOASOBIの楽曲「ミスター」の考察記事も書いています!

こちらもぜひ、本記事とあわせてご覧ください!

当サイトでは、「はじめての」に収録されている他の作品の考察も行っています!

「他の作品もどんなのか気になる!」という方は是非!(後日更新予定)

この記事の感想やご意見など、是非コメント欄までお待ちしております!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
それでは(@^^)/~~~

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