こんにちは!
今日は、「はじめての○○」をテーマに4人の直木賞作家が描く短編集、『はじめての』より『ユーレイ(辻村深月)』を徹底レビュー&考察していきます!
海の見える遠くの街に家出をしてきた「私」。
海岸で出会った女の子は、「ユーレイ」なのか?
心温まるストーリーに注目!
それでは、いってみましょう!
*この記事では、『ユーレイ』のネタバレを含みます。
次の基準を目安に、この記事の内容をどこまで読むかご確認ください。
ネタバレ小
作品の軽い概要のみ触れ、複線などの重要なネタバレは避けます。
ネタバレ中
作品の中で面白かったポイントなどを、すこーしだけ具体的にご紹介します。
ネタバレ大
物語の考察など、がっつりネタバレを含みます。
読む時間はないけれどどんな作品か知りたい、すでに読んだので考察を見たい、という方向けです。
『はじめての』概要:ネタバレ無
YOASOBI×直木賞作家のコラボレーション

本作品が収録されている短編小説集『はじめての』は、人気アーティストである『YOASOBI』と、4人の直木賞作家(島本理生、辻村深月、宮部みゆき、森絵都)がコラボレーションして生まれました。
「現代エンターテイメントの最前線&最高峰!」と銘打たれたこの短編集。
4人の直木賞作家がそれぞれ、「はじめて○○をした時に読む物語」をテーマに作品を描きます。
さらに、これらの作品を原作とした楽曲をYOASOBIが順次配信していくという、一作品で二度おいしいプロジェクトとなっています。
『ユーレイ』を原作とした楽曲はまだ発表されてませんが、順次公開されていくようです!
楽しみですね!
収録されている作品は、次の4つです!
『私だけの所有者』-はじめて人を好きになったときに読む物語(島本理生)
『ユーレイ』-はじめて家出したときに読む物語(辻村深月)
『色違いのトランプ』-はじめて容疑者になったときに読む物語(宮部みゆき)
『ヒカリノタネ』-はじめて告白したときに読む物語
それでは、次の章からは「ユーレイ」の内容についてみていきます!
あらすじ:ネタバレ小
中学生である「私」は「学校に戻りたくない」という思いから家出を決意した。
しばらく電車に揺られた後、私は海沿いの街に停まった電車を降りる。
海辺まで歩いて行った私は、広場に花束が手向けられていることに気が付いた。
「誰かここで亡くなったのだろうか?」そんなことを考えていると、突然背後から声をかけられる。
驚き振りむく私、そこには白いワンピースを着た少女が立っていた…
はたして、この少女は何者なのだろうか?
そして、「私」が歩んだ結末とは?
レビュー:ネタバレ中
心温まる作品でした。
家出をしてきた「私」の横で、ただただ共に時間を過ごした「少女」。
一晩の中で描かれた「私」の葛藤と、「少女」のやさしさが魅力的で、作品世界に引き込まれていきました。
本作品は、物語中ずっとどことなく(いい意味で)違和感を感じさせるような構想になっており、「少女」の正体がいまいちつかめないようになっていました。
分かりやすいようで何となくしっくりこない複線が物語にちりばめられており、最後に回収していく方式は、良い意味で予想を裏切られました。
心温まるストーリーと、絶妙な伏線が魅力的な作品です。
ここまでが、本作品をまだ読んでいない方向けの内容になります!
この先は、是非この作品を読んでから見ることをおすすめします!
以下に、リンクを張っておきますね!
考察:ネタバレ大
ユーレイの正体(ネタバレ防止タイトル)

ネタバレ防止のためタイトルを少しぼかしていますが、ここでは「なぜユーレイは直接現れなかったのか」について考察します。
物語のラストでは、結局一晩共に過ごした少女(=のどか)はユーレイではなく、別のユーレイが少女(生きている)を呼び寄せたことが明らかになりました。
このユーレイこそ、水難事故で亡くなった少女だったわけですが、なぜ彼女は自分から「私」の前に現れるのではなく、わざわざのどかを呼んだのでしょうか?
ユーレイはのどかに手招きをしている描写があるので、自分自身で「私」の前に現れて説得することも出来そうなものです。
この理由は、「私に友達を作りたかったから」ではないかと考えられます。
ユーレイは今から死のうとする「私」をみて、心を痛めました。なんとか、「私」に生きていて欲しい。
今日という日を乗り越えてしまえば、思い直してくれるかもしれない。
しかし、ユーレイは生者と一緒にいることはできないのでしょう。
仮にあの夜友達になったとしても、もう一緒にいることはできません。
だからこそユーレイは、のどかを呼んだのではないでしょうか。
「私」の悩みを聞き、死を思いとどまらせ、友達になる。
誰にも悩みを話せなかった「私」にとって、新しい友達ができたことはとても大きな出来事だったことでしょう。
「私」が死ぬことを思いとどまるためには、これからも一緒に過ごすことのできる生きた友人が必要だったのではないでしょうか。
だからこそユーレイは、のどかを海に呼び出したのです。
「逃げ出すこと」を肯定してくれる作品
この物語は、「私」のように辛いことから離れたい一心で「逃げ出すこと」を優しく肯定してくれるように感じました。
もちろん、自ら死を選ぶこと自体がいいこと、とは描かれていません。
しかし本作品で「私」は、家出をしたからこそ自分の悩みを打ち明けられる友人が出来ました。
「家出しちゃって、怒られるかもだし、大騒ぎになったり、みんな心配してるかもだけど、生きて戻ってきたら、それで大丈夫だよ。なんとかなる」
『はじめての』(株式会社水鈴社 発行)より『ユーレイ(辻村深月)』
のどかが言った言葉です。
逃げ出すこと自体が悪いことじゃない。生きてさえいれば、なんとでもなる。
我々にも子供の時に家出を考えたり、大人になったとしても、何かから逃げ出したくなる時もあるでしょう。
そんなときも、逃げ出すことが悪いわけじゃない。ただ、生きていればそれでいい。
このような優しいメッセージが込められた作品だと感じました。
まとめ
「ユーレイ」のレビュー&考察でした!
心温まるストーリー展開はわかりやすくも、複線もしっかりあるバランスのいい作品だと感じました。
深いメッセージも感じることができて、悩みがある時、逃げ出したいときに読みたくなる作品です。
後々公開されるYOASOBIの楽曲についても、とても楽しみです!
本作品が気になった!という方は、是非一度読んでください!
以下に、リンクを張っておきますね!
また、収録されている他の作品の記事もありますので、こちらも是非合わせてどうぞ!
この記事の感想やご意見など、是非コメント欄までお待ちしております!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
それでは(@^^)/~~~
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