こんにちは!
今日は、YOASOBIの「ミスター」を徹底的に考察し、歌詞の意味を解説します!
島本理生の作品『私だけの所有者』が原作の本楽曲。
アンドロイドが初めて抱いた感情と、物語の結末に思わず涙が…
本楽曲の魅力に、歌詞分析の観点から迫っていきます!
この記事では、『はじめての』に収録されている『私だけの所有者』のネタバレを含みます。
ネタバレが嫌いな方は、原作を読んでからこの記事を読むか、ブラウザバックを推奨します。
原作『私だけの所有者』とは?
本作品が収録されている小説集『はじめての』は、YOASOBIと、4人の直木賞作家がコラボレーションして生まれました。
4人の直木賞作家がそれぞれ、「はじめて○○をした時に読む物語」をテーマに作品を描きます。
「ミスター」の原作となったのは、島本理生の作品『私だけの所有者』です。
この作品は、「はじめて人を好きになったときに読む物語」がテーマとなっています。
以下、『私だけの所有者』のあらすじです。
主人公である僕はかつて、Mr.ナルセという人物が所有するアンドロイドだった。
Mr.ナルセは不愛想な人物で、僕は彼の機嫌を損なわないように、彼の役に立つために、日々思い悩んでいた。
緊張感に満ちた毎日だったが、僕はだんだんそんな毎日を愛おしく思うようになっていき…
僕に芽生えた、本来アンドロイドが持つはずのない感情と、僕とMr.ナルセの結末とは?
テーマに沿っていえば、「アンドロイドがはじめて人を好きになった物語」です。
原作小説もとても良かったので、当ブログでもレビュー&考察記事を執筆しています。
より深く作品を知りたいという方は是非、こちらの記事もあわせて読んでいただければと思います!
歌詞の意味
1番
シングルサイズの部屋で 一人きり
YOASOBI「ミスター」-作成:Ayase
思い出すのはあなたとの暮らし
物語の舞台は ビルが群れる
大都会を遠くに見る
海辺の街

ここでは、原作の始まりのシーンが表現されています。
“シングルサイズの部屋で 一人きり
思い出すのはあなたとの暮らし“
原作の物語は、「僕」が「先生」という人物に手紙を書くところから始まります。
『私だけの所有者』は、「僕」が先生に過去の思い出を手紙として綴る、という形式でストーリーが進んでいきます。
「あなた」とは、原作で登場する「Mr.ナルセ」のことです。
この歌詞では、Mr.ナルセのいない部屋で彼との暮らしを思い出す「僕」の様子が描かれています。
物語の舞台となったのは、都市部から離れた海辺の街です。
ここから、「僕」とMr.ナルセの物語が始まっていきます。
初めて会った日のことだって
YOASOBI「ミスター」-作成:Ayase
今もまだちゃんと覚えてる
フォーマルなシャツ
ジャケットが少し不似合いなあなた
言葉数は少なくて いつも厳しくて
叱られてばかりで
機械仕掛けの心を
無力さが包んでいった
でも
ここでは、Mr.ナルセと出会ったばかりの頃の話が描かれています。
原作ではMr.ナルセは世間から離れ、都市部から離れた場所でひっそりと暮らす、不愛想な男として描かれてます。
あまり多くを話さず、叱られてばかりの「あなた」との日々は、「僕」にとって緊張感に満ちたものでした。
“機械仕掛けの心を
無力さが包んでいった“
「僕」は、「あなた」の気持ちを理解することができません。
アンドロイドである「僕」の存在意義は、「所有者の役に立つこと」。
もっと人間のようにふるまえたら、「あなた」は喜んでくれるだろうか。
このような悩みが、「僕」の中に募っていきます。
あなたを知りたくて
YOASOBI「ミスター」-作成:Ayase
何もかも知っていたくて
だけど教えてなんて
言えずに一人
そっと夜に祈る
少しでも分かりたくて
そんな日々を繰り返した
ここでは、「あなた」のことを知りたいと思う「僕」の気持ちが表現されています。
「あなた」にもっと話して欲しい、「あなた」の気持ちを理解したいと「僕」は感じます。
原作でも描かれていますが、この時点での「あなた」を知りたいと「僕」が思っている理由は、アンドロイドとして所有者の役に立つためです。
“だけど教えてなんて
言えずに一人
そっと夜に祈る“
「僕」は、「あなた」に“教えて”ということができませんでした。
また、叱られてしまうかもしれないから。「あなた」の機嫌を損ねてしまうかもしれないから。
そんな「僕」は人間の習慣にならって、夜空に願いを捧げるのです。
2番
それでも時折見せてくれた
YOASOBI「ミスター」-作成:Ayase
穏やかなあの表情も
一度だけ浮かべた涙も
隠し切れずに溢れていた
優しさだった
あの日もそうだった
ここでは、少しずつ「あなた」に惹かれていった「僕」の様子が描かれています。
「あなた」は不愛想ですが、本当は優しい人間なのです。
時折見せた、穏やかな表情。
「僕」やアンドロイドのことを想い涙を流したこともあります。
(このあたりの描写はまじで原作を読んで欲しいです。)
「僕」は次第に、そんな「あなた」に惹かれていきます。
2番以降
あれは二人最後の思い出
YOASOBI「ミスター」-作成:Ayase
暗闇でこの手を握り返して
笑ってくれた
あなたはもういない

ここでは、原作での「僕」と「あなた」の結末が描かれています。
“あれは二人最後の思い出
暗闇でこの手を握り返して“
この歌詞は、原作のワンシーンを表現しています。
都市部に出かけた二人は、政府に対する暴動に巻き込まれました。
爆撃を受けた二人は、今は使われていない地下鉄に閉じ込められてしまいます。
けがをして歩けない「あなた」に壁に伝う水を飲ませるなど、「僕」はできることをしようとします。
この時「僕」に、本来アンドロイドらしくはない、「ひとりにしないで」という感情が芽生えました。
それを汲み取ったのか、「あなた」は優しく「僕」の手を握り返します。
そして「あなた」は、けがをした自分を置いて「外に出ろ」と命令します。
「僕」は、「あなた」の最期の命令を聞き入れ、1人で外に出ました。
これらの歌詞では、原作で描かれた二人の別れが表現されています。
今でも聴きたくて
YOASOBI「ミスター」-作成:Ayase
もう一度聴かせて欲しくて
優しくて不器用な
あなたの声を厳しい言葉を
なんて願うこの気持ちは
どんな名前なんですか
またいつもと同じように
私のこと叱ってよミスター
ここでは、「僕」に生まれたある感情について描かれています。
「あなた」にもう一度会いたい、また厳しくしかって欲しいと「僕」は感じます。
1番サビでは「所有者のために」という行動原理でしたが、ここで描かれているのは紛れもない「僕」自身の願いです。
アンドロイドと人間の関係を超えた、強い想いが「僕」の中に芽生えたことがわかります。
“なんて願うこの気持ちは
どんな名前なんですか“
この歌詞で表現されたのは、原作のテーマでもある「好き」という気持ちでしょう。
本来アンドロイドが持つことのない、所有者ではなく自分自身に起因した感情。
「僕」の感情に大きな変化があったことが示されて、本楽曲は終了です。
考察
人を好きになることの本質

本来アンドロイドの存在意義とは、「所有者の役に立つこと」と原作では表現されていました。
人間は雑用係に、子どもの代わりに、欲望の発散のためにアンドロイドを使役します。
そしてアンドロイドにとっての喜びとは、所有者の幸せそのものなのです。
一方で「僕」に芽生えた「好き」という感情は「所有者の役に立つこと」ではなく、自分自身に起因した気持ちです。
原作作品中ずっと「あなた」のために働いてきた「僕」ですが、「あなた」との別れのシーンでした行動は、「僕」自身の好きという気持ちに由来した行動だったと考えられます。
言い換えれば、「あなたを死なせたくない、ひとりになりたくない」と思ったことが行動の根底にあったのです。
アンドロイドとしての使命ではなく、自分自身の「相手の役に立ちたい」というエゴ。
本楽曲と原作で示されたのは、まさに「人を好きになることの本質」だったのではないでしょうか。
小説×楽曲の新たなエンターテイメント
本楽曲は原作とのつながりが特に強い楽曲だと感じました。
原作を読んで初めて気づく感情や表現の数々。
筆者は、楽曲→原作→楽曲という順番に見聞きしたのですが、そのたびに新たな発見がありました。
原作と本楽曲は、お互いに補完し合うというか、相互作用でより魅力を増すと感じました。
もしかすると、『はじめての』プロジェクトが掲げた新たなエンターテイメントとは、「音楽と小説を合わせることで生まれるエンターテイメント」のことだったのではないかと思います。
小説版のミュージカル、とでも言えましょうか。新しい試みなので、こんな表現ぐらいしか思いつきません。
これまでYOASOBIが行ってきた「小説を音楽にする」を超えた、「小説と音楽の融合」が本楽曲には見られました。
筆者の感想
YOASOBIと作家が見せる新たなエンターテイメント、存分に味わえました。
どちらか一方だけではなく、二つを融合させることで楽しめる。
これまでのYOASOBIとはまた一味違った魅力を本楽曲に感じることができました。
二つの作品を行ったり来たりして味わうことで、一つの大きな魅力が形成されています。
まだ原作を読んでいない方は、是非とも読んで欲しいと思います。
楽曲と原作、あわせて200%、いや300%楽しむことができます。(がばがば計算)
以下にリンクも貼っておくので、ぜひご自身で2つの作品を味わってください!
この記事の感想やご意見など、是非コメント欄までお待ちしております!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
それでは(@^^)/~~~
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